
地方でも最新医療ができると証明するために
「医学部ではなく工学部志望だった」という関岡氏は、学園紛争の影響で東京から地元の三重大学医学部に入学した。当時は解剖ひとつとっても腰が引けていたそうだが、次第に医学のおもしろさに目覚めていく。
もともと研究者気質であったため、大学にそのまま残り研究、実験を行う日々を過ごしてきた。研究者としての経験が、自身のクリニックでの診療に活かされているという。
「研究者というのは基本的に1人でなんでもトライアルするんです。臨床の現場だとCTにしてもMRIにしても技師に頼むのですが、研究の場合自分で動かすしかなかった。そうした経験があったから検査機器を使いこなせるようになりました」
クリニックには 心臓・冠動脈も検査できる高速精細三次元CT(3DCT)、ハイビジョン内視鏡、超音波エコーなど最新の検査設備がふんだんに取り入られている。こうした検査設備をそろえることで、専門である循環器系の診断だけでなく、あらゆる患者に対応できると語る。
「当院は南伊勢町だけでなく、伊勢市や志摩市など近隣からも患者さんがいらっしゃいます。循環器の不調のほか、肺炎や外傷、腰痛、膝痛、皮膚疾患、はたまた耳の調子が、なんて方も多いんです。そうした専門外の症例であっても、CTや内視鏡などを使ってしっかりと検査ができれば判断を間違えないし、場合によっては専門医よりも高度な診断も可能になります。とりあえず様子を見ましょうではなく、診断に自信を持って前向きに切り込んでいけるし、その後の治療も効率的に取り組めます」
日本人の死因で最も多いのが癌であり、続いて心臓、脳などの動脈硬化性疾患だ。これらを日常診療で見逃さず、早期に診断するには3DCT、内視鏡、超音波エコーの駆使は重要である。 実際にそうした精度の高い診断装置を数多く導入することで、正確な診断や重症度の判断をする上でも大いに役立つことは言うまでもない。とくに重篤な疾患によっては半日、1日の遅れが生命を左右するため、そうした早期の診断や治療の開始は必要不可欠なのだ。
また従来、入院治療が行われてきた肺炎など多くの感染症や心不全は 3次元CTや内視鏡等での正確、迅速な初期診断で科学的安心のもと、重症例を除いて外来治療に移行できる(科学的ダウンサイジング)。これによって入院による身体拘束や医療費などが削減可能で、効率的医療が期待される。
関岡クリニックは医師一人で志摩地区の救急対応の医院としても機能しており、関岡氏が出張など不在にしていない限り患者を受け入れているため、ほぼ休みなく24時間稼働し続けていることも特筆すべき点だ。高精細3DCTや血液生化学迅速検査機器を設備することで夜間、診療時間外の救急にも自信をもって積極的に対応しており、そうした患者の立場にたった細かな配慮が、患者に喜ばれる要因の一つとなっている。「大変ですが、それが生きがいじゃないですか」と笑う当人は、今の医療活動に充実感があるという。
「研究者時代は開業医なんて町の修理屋さんぐらいにしか思っていなかった。しかし、いざ開業してみると地域医療ではオールラウンドに診られなければ意味がない。患者さんたちも私を頼ってきてくれます。この人たちの命を預かっているからには、ちゃんとした仕事をしたい、そう願っています」